設計段階や施工の見積もり時、「電磁錠」と「電気錠」のどちらを提案すべきか迷ったことはないでしょうか。カタログ上の記載や発注書での呼び方がバラバラで、担当者によって定義もまちまち——そういった現場の混乱は、実はよく起きています。この記事では、両者の構造上の違いから、停電時の挙動、設置環境の適合性、コスト感まで、選定判断に必要な要素を実務目線で整理します。

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「電気錠」は上位概念。電磁錠はその一種

まず前提として押さえておきたいのは、電磁錠は電気錠の一種だという点です。「電気錠 vs 電磁錠」と並べると別物のように見えますが、正確には包含関係にあります。

電気錠とは、「電気によって施解錠を制御できる錠前の総称」です。その中にモーター式、ソレノイド式、そして電磁式(=電磁錠)が含まれます。電磁錠だけを特別視するのではなく、「どの駆動方式を選ぶか」という文脈で考えると、選定の判断軸が明確になります。

電磁錠 電気錠 違い - 電気錠の分類ツリー。上位概念「電気錠」の下に「電磁錠(電磁式)」「モーター式電気錠」「ソレノイド式電

Q: 電磁錠と電気錠はどう違いますか?

電気錠は電気で施解錠を制御する錠前の総称で、電磁錠(電磁式電気錠)はその一種です。電磁錠は電磁石の吸着力で扉を固定する方式で、可動部がないため摩耗が少ないのが特徴です。

現場で「電磁錠と電気錠、どっちにしますか?」という質問が出るとき、多くの場合は「電磁錠か、それ以外のモーター式・ソレノイド式か」を聞いていることがほとんどです。この文脈の読み違えが、仕様確認の手戻りにつながるケースもあるので注意してください。


電磁錠の仕組みと、モーター式電気錠との構造的な差

電磁錠の動作原理はシンプルです。ドア枠側に取り付けた電磁石(マグネット)に通電すると、扉側のアーマチュアプレートが吸着し、施錠状態になります。解錠は通電を止めるだけ——機械的な動きはほぼありません。

一方、モーター式電気錠は内部のモーターがデッドボルト(かんぬき)を物理的に動かして施解錠します。錠前としての構造はシリンダー錠に近く、扉に加工が必要になるケースも多い。

この構造の違いが、いくつかの実務上の差を生みます。

摩耗リスク
電磁錠は可動部がないため、開閉回数が多い扉でもメンテナンス頻度が低くなりやすい。コンビニや病院の通用口のように、1日数百回の開閉が見込まれる環境には適しています。

停電時の動作(フェールセーフ vs フェールセキュア)
電磁錠は「通電で施錠、停電で解錠」というフェールセーフ動作が基本です。停電時に扉が開放されることで、避難経路の確保という観点から法的に求められる場面があります(建築基準法・消防法との関係については設計時に確認が必要です)。モーター式はフェールセキュア(停電でも施錠維持)の製品も多く、セキュリティ優先の室内扉に向いています。

電磁錠 電気錠 違い - 停電時の動作フロー比較。「停電発生」を起点に、電磁錠ルート(通電停止→電磁石OFF→扉解放→避難路確

Q: 電磁錠は停電時にどうなりますか?

標準的な電磁錠は停電時に通電が切れ、扉が解錠(開放)されます。これはフェールセーフ動作と呼ばれ、避難経路確保の観点から防火扉などに採用されるケースがあります。

取り付け加工の程度
電磁錠は扉枠とドア面にブラケットを固定するだけで設置できるため、扉本体への大きな加工が不要です。既存扉のリプレース案件や、木製・アルミ製の軽量扉への後付けに向いています。


設置環境と用途で見る、選び方の実際

「電磁錠か、それ以外か」という判断は、結局のところ「その扉がどんな環境でどんな使われ方をするか」に帰着します。

たとえばオフィスビルのエントランス。1日に数百人が出入りし、来訪者管理や入退室ログも必要——こういう場面では電磁錠が選ばれることが多い。吸着力が強く、頻繁な開閉に耐えられる上、カードリーダーや顔認証リーダーとの組み合わせが容易だからです。

では、重要書類を保管するサーバールームの扉はどうでしょう。停電時に扉が開放されては困る。そういう場合はフェールセキュアのモーター式か、バッテリーバックアップ付きの電磁錠を選ぶことになります。

屋外設置かどうかも見落とせないポイントです。エントランス横の雨ざらしになるゲートや、駐車場の出入口に設置するなら防水性能が必須です。電磁錠は製品によってIP65〜IP66相当の防水・防塵性能を持つものがあり、屋外用途にも対応できます。ただし防水グレードは製品ごとに異なるため、仕様書での確認は欠かせません。

Q: 電磁錠の屋外設置は可能ですか?

製品によっては可能です。屋外設置の場合はIP65以上の防水・防塵性能を持つ製品を選ぶ必要があります。設置環境の風雨・直射日光・塩害リスクも合わせて確認することが推奨されます。

エレベーターホールへの設置も、電磁錠が選ばれやすいシーンのひとつです。エレベーターの開閉タイミングとの連動制御が必要なケースでは、制御盤との信号配線がシンプルな電磁錠の方が施工しやすい場面が多い。

電磁錠 電気錠 違い - 設置環境別の電気錠方式比較表。行に「エントランス(高頻度通行)」「サーバールーム(セキュリティ優先)


コスト・施工・メンテナンスを現場目線で比較する

正直なところ、コスト面だけで錠前の方式を選ぶのはリスクがあります。ただ、予算や工期の制約は現実の設計には避けられない要素なので、おおよその傾向を整理しておきます。

初期費用
電磁錠本体の価格帯は、一般的にモーター式電気錠と同等か、やや幅がある印象です。ただし扉への加工が少ない分、施工費が抑えられるケースも出てきます。特に既存扉の流用を求められるリノベーション案件では、電磁錠の方が工数を減らせることがあります。

ランニングコスト
電磁錠は「通電中は常に電力を消費する」という点をよく確認してください。施錠中は常に電磁石がオンになっているため、モーター式に比べて消費電力が継続的に発生します。施設の規模や扉の枚数によっては、電気代への影響を試算に含めた方が親切です。

メンテナンス
可動部がない電磁錠は、定期的な注油やボルトの調整が不要なケースが多い。ただし、アーマチュアプレートとマグネット面の密着度が経年で変化することがあるため、定期的な吸着力チェックは推奨されます。


Lavishが電気錠システムとして提案できること

ここまでは電磁錠・電気錠の一般的な技術解説でしたが、弊社の電気錠システム「Lavish」が実際にどんな現場に対応できるかを紹介します。

Lavishは電磁錠のコイルに銅素材を採用した設計で、耐久性と長寿命を重視しています。DC12V・24V両対応のため、既存の制御盤電源に合わせた設計が可能です。防水性能はIP66準拠で、屋外エントランスや雨がかりのある場所にも対応できます。

電磁錠 電気錠 違い - Lavish 電気錠リーダー、オフィスエントランス設置イメージ

登録ユーザー数は最大20,000人まで対応しており、大規模オフィスビルやマンション共用部、施設の入退室管理にも対応可能です。リーダーは「スタンドアローン」「Wiegand出力」「制御器モード」の3モードを切り替えられるため、既存の入退室管理システムへの組み込みも選択肢に入ります。利用履歴のログ管理はローカルPCのソフトウェアで対応しており、エントランスやエレベーター制御との連携にも対応しています。

Q: Lavishはどんな規模の施設に対応していますか?

最大20,000ユーザーの登録に対応しており、小規模オフィスから大規模ビル・施設まで幅広く対応可能です。既存の入退室管理システムへのWiegand接続にも対応しています。

電磁錠の選定やLavishの仕様についてご質問がある場合は、設計段階からのご相談も承っています。図面や仕様書を元に、設置環境に適した構成の提案が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。


電磁錠と電気錠の違いを整理すると、「どちらが優れているか」ではなく「どの方式がその扉・環境・用途に合うか」が問いになります。停電時の動作要件、設置環境の防水グレード、登録ユーザー数、既存システムとの接続——これらを仕様確認のチェックリストとして持っておくだけで、選定判断の精度はかなり上がります。具体的な施設への提案でご不明な点があれば、お問い合わせフォームからご連絡ください。