夜間に無人になる処置室、カギが閉まっているはずの薬品庫、患者の個人情報が格納されたサーバー室——病院には、「本来その場にいるべき人だけが入れる」場所が数多く存在します。しかし実際には、アナログな鍵管理や古い電気錠のまま運用を続けているケースが少なくありません。「誰がいつ入ったか記録が残らない」「鍵の紛失・複製リスクを完全には排除できていない」という課題を抱える医療施設管理者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、病院・クリニックにおける入退室管理の考え方を区域別に整理し、適切なアクセス制御の設計方法と、実際にシステムを導入する際の選定ポイントをお伝えします。

病院 セキュリティ 入退室 - Clean and modern Japanese hospital corridor with s

病院のセキュリティリスクは「場所」ごとに異なる

医療施設のセキュリティを語るとき、「とりあえず入口を強化すれば十分」という発想では不十分です。病院の建物内には、リスクの性質がまったく異なる複数のゾーンが混在しているからです。

外来患者が行き来するエントランスと、麻薬・向精神薬を保管する薬品庫では、求められるセキュリティレベルは全く違います。一般病棟への患者家族の立ち入りと、ICU・手術室への関係者のアクセスも同様です。「全館同じ対策」では守りきれない場所が必ず出てきます。

医療機関の現場でよく聞かれるリスクは、主に以下の3つに整理できます。

  • 部外者の不正侵入: 患者のプライバシー侵害、個人情報の漏洩
  • 内部不正・ヒューマンエラー: 権限のないスタッフが立ち入ることによる医療事故・情報漏洩
  • 薬品・医療機器の盗難: 麻薬指定薬品など高リスク資材の管理不備

こうしたリスクに対して「誰でも開けられる南京錠」や「合鍵が何本あるか分からない機械鍵」で対応しているとすれば、管理上の問題だけでなく、法令遵守の観点からも見直しが必要になる場合があります。

Q: 病院で入退室管理が必要な主な理由は何ですか?

患者の個人情報保護、麻薬・向精神薬などの薬品管理、医療機器の盗難防止、内部不正の抑止という4つの観点から、区域ごとのアクセス制御が求められます。

病院 セキュリティ 入退室 - 病院内のゾーン別セキュリティリスクマップ(エントランス・一般病棟・薬品庫・ICU・サーバー室・駐車場

区域別に見る、アクセス制御の設計アプローチ

「どの扉を、誰に、いつ開けるか」——この設計こそが入退室管理の核心です。医療施設では特に、ゾーニングを明確にしたうえでアクセス権限を細かく設定することが求められます。

エントランス・外来エリアは不特定多数が行き来する場所ですが、夜間・時間外は完全に施錠管理することが基本です。ICカードや暗証番号による時間帯別の開錠制御を取り入れると、夜間の警備員配置を減らしながらセキュリティを維持できます。

病棟・ナースステーション周辺では、スタッフと患者・家族の動線を明確に分けることが大切です。スタッフのみが入れるバックヤード、患者が立ち入れる範囲、面会時間以外は施錠する病棟扉、といった多段階の制御が現実的な選択肢になります。

薬品庫やサーバー室など高リスク区域については、単一認証(ICカードのみなど)より、カード+暗証番号といった多要素認証の採用が望ましいとされています。また、入退室の時刻・人物をすべて記録し、定期的に監査できる体制を整えることが、法令対応の観点でも有効です。

Q: 病院の薬品庫に適した入退室管理の方式は?

ICカードと暗証番号を組み合わせた多要素認証方式が有効です。すべての入退室ログを自動記録することで、内部監査や事故発生時のトレーサビリティを確保できます。

既存のビルシステムや防犯カメラと連携できるかどうかも、導入時に確認すべき重要なポイントです。入退室管理システム単独で動かすより、カメラ映像と入退室ログを突き合わせられる環境を整えることで、セキュリティの精度は大きく向上します。

スタッフ管理と「ログの見える化」が医療施設の安全を支える

規模の大きな病院では、医師・看護師・技師・事務職・清掃スタッフ・外注業者など、数百〜数千人が同一施設内で動いています。それだけの人数の入退室を、手書き台帳や人の記憶で管理するのは、もはや現実的ではありません。

あるスタッフが深夜に薬品庫へ立ち入った記録が残っているかどうか——こうした情報が後で参照できる状態にあることが、インシデント発生時の対処速度を大きく左右します。「記録があること」が、不正抑止のそのものにもなります。

電子的な入退室管理システムを導入すると、登録済みのスタッフや業者ごとに「入れる場所・時間帯」を細かく設定し、すべての行動ログを自動記録できます。退職したスタッフのカードを即時無効化できる点も、物理的な鍵管理では難しかった運用上のメリットです。

Q: 病院スタッフの入退室ログはどのくらいの期間保存するべきですか?

法令上の明確な規定はありませんが、医療機関の内部規定や監査対応の観点から、一般的に3〜5年の保存が推奨されるケースが多いとされています。システム選定時にはログ保存容量・期間を確認することをお勧めします。

病院 セキュリティ 入退室 - 医療施設における入退室管理の権限設定フロー(スタッフ種別(医師・看護師・事務・外注業者)ごとにアクセ

なお、清掃業者や医療機器のメンテナンス業者など外部業者のアクセス管理は見落とされがちですが、侵入リスクの観点では無視できません。入館時間を限定した一時カードの発行や、立ち入りエリアを制限した権限設定を組み合わせることで、外部業者のリスクも体系的に管理できます。

導入前に確認したい、システム選定の3つのポイント

実際に入退室管理システムを選ぶ段階になると、カタログには載っていない「現場での問題」が浮かび上がってきます。特に医療施設は設備の老朽化・改修の難しさ・予算制約が重なる環境でもあり、「導入後に使いこなせなかった」という事例も存在します。

1. 既存の建物・電気設備に対応しているか

古い建物に後付けで導入する場合、大規模な配線工事を伴うシステムは現実的ではないことがあります。配線方式(DC12V / DC24V対応かどうか)、取り付け工事の規模感、既存の電気錠との互換性を事前に確認することが必要です。

2. 登録ユーザー数と拡張性

中規模病院でも、スタッフ・関係者・出入り業者を含めると数百〜数千人の登録が必要になります。システムが対応できる最大ユーザー数を必ず確認しましょう。将来的な増棟・テナント変更も見据えた拡張性も重要な観点です。

3. 管理ソフトウェアの使いやすさ

ICTに詳しくない施設管理担当者でも操作できるか、という点は見過ごせません。権限変更・カード発行・ログ確認といった日常的な操作が直感的にできるかどうかを、デモや試用で確認することをお勧めします。

Q: 医療施設向け入退室管理システムの導入費用の目安は?

扉の数・認証方式・工事規模によって大きく異なります。リーダー1台あたりの機器費用に加え、電気工事費・ソフトウェアライセンス費が主な内訳です。詳細はシステムメーカーへの個別見積もりを推奨します。

病院 セキュリティ 入退室 - 入退室管理システムの方式別比較表(スタンドアローン型・ネットワーク接続型・ローカルPC管理型の3方式

電気錠「Lavish」が医療施設に対応できる理由

ここからは、弊社の電気錠ブランド「Lavish」が医療・施設管理の現場でどのように活用できるかをご紹介します。

Lavish は、オフィスや公共施設向けに開発された電気錠シリーズです。日本国内の主要メーカーの電気錠に対応しており、既存の建物設備を活かしながら導入できる設計になっています。

病院 セキュリティ 入退室 - Lavish 電気錠リーダー(施設・オフィス向け)

医療施設での運用を想定した際に特に注目いただきたい機能が3点あります。

登録ユーザー数 最大20,000人に対応しており、大規模病院や複合医療施設でも、スタッフ・関係者・外部業者を一元管理できます。退職・異動時のカード無効化も管理PCから即座に対応可能です。

ローカルPCによる入退室ログ管理を標準搭載しており、すべての入退室記録をPC上で確認・出力できます。クラウドを経由せずに施設内のネットワークで完結するため、医療情報の取り扱いに慎重な環境でも安心して導入いただけます。

リーダーは3つの動作モード(スタンドアローン / Wiegand出力 / 制御器モード)に対応。既存のビル管理システムやセキュリティカメラとの連携も考慮した構成が可能で、エレベーター制御への応用実績もあります。DC12V・DC24V 両対応、防水規格 IP66 準拠のため、屋外エントランスや駐車場ゲートへの設置も対応しています。

導入コストについては、規模・設置場所・工事内容によって個別に異なります。まずはお気軽にご相談ください。


病院のセキュリティ対策は、「誰がどこに入れるか」という設計の積み重ねです。個人情報保護・薬品管理・スタッフの行動ログという3つの軸を整理したうえで、施設の規模や既存設備に合ったシステムを選定することが、長く使える入退室管理の第一歩になります。

Lavish の導入事例や仕様の詳細について、施設の状況をヒアリングしながらご提案いたします。

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