技術解説
配線式の入退室管理は無線不要でも安全?セキュリティ上の利点と注意点
目次
配線式の入退室管理は、無線が不要なぶん「古い仕組み」と見られがちです。それでもセキュリティ面での利点から、サーバー室や重要エリアでは今も有線を選ぶ企業が少なくありません。一方で、情報システム部門の方からは「無線のスマートロックと比べて、何がどう安全なのか説明しにくい」という声もよく聞かれます。
この先は、次の3点を順に整理していきます。
- 配線式が攻撃面(アタックサーフェス)を小さくできる理由
- 無線方式で見落とされやすい運用リスク
- 配線式でも手を抜けない配線・制御器の守り方

配線式の入退室管理が無線不要でもセキュリティに強い理由
結論から言うと、配線式の入退室管理は「電波という入口を持たない」「電池切れで止まらない」「通信経路を物理的に囲い込める」という3点で、セキュリティを設計しやすい方式です。ただし配線そのものの保護と制御器の置き場所を誤ると、その利点は薄れてしまいます。
そもそも配線式とは、カードリーダーなどの読み取り機と電気錠、それらを制御する制御器(認証結果を判定して錠に解錠指示を出す装置)をケーブルで結ぶ構成のことです。電源もケーブルから供給するため、機器ごとの電池交換は発生しません。
Q: 配線式の入退室管理が無線不要でも安全とされる理由は?
A: 電波を使わないため遠隔からの電波傍受・妨害の対象になりにくく、電池切れで止まる心配もありません。通信経路を壁内や配管内に収めて物理的に守れる点も利点です。
情報セキュリティの考え方に置き換えると分かりやすいかもしれません。無線は「どこからでも届く」こと自体が便利さの源ですが、裏を返せば、建物の外や廊下からも信号に触れられる余地があるということです。配線式なら、信号に触れるにはケーブルそのものへ物理的に近づく必要があります。
現場でよくある例として、サーバー室の前の廊下に誰でも立ち入れるフロアがあります。こうした場所では、「扉の外から何ができるか」を説明できることが監査対応でも効いてくるのです。
あなたの会社の重要エリアでは、扉の外側にどんな通信が漏れているか、把握できているでしょうか?
無線方式で情報システム担当が気にすべきリスクと配線式の利点
無線方式の入退室管理にも、工事が少ない、後付けしやすいといった明確なメリットがあります。オフィス向けスマートロックの比較記事でも、配線工事が不要なワイヤレス仕様で配線コストを抑えられる点が特徴として挙げられています(参考:アスピック「オフィス向けスマートロック比較12選」)。そのうえで、セキュリティ担当の目線で気にしておきたい点を整理しておきましょう。
1つ目は電波に関するリスクです。一般にBluetooth(BLE)などの近距離無線では、通信を中継して距離をごまかすリレー攻撃や、同じ周波数帯での妨害・干渉が議論されています。対策の進んだ製品も多いものの、どの製品がどこまで対策しているかを一台ずつ確認する手間は残ります。
2つ目は電池です。電池式の錠は、残量が減ると動作が不安定になったり、交換作業のたびに扉を開け閉めする時間が生まれたりします。拠点数や扉数が多い組織ほど、交換漏れの管理は地味に重い負担になるでしょう。
3つ目がファームウェア(機器内部のソフトウェア)の更新管理です。正直なところ、ここは見落とされがちです。扉ごとに独立した無線機器が並ぶ構成では、脆弱性が公表されたときに更新すべき台数が多くなり、どの扉が最新版なのかを追う運用が必要になります。
Q: 無線式の入退室管理で注意すべきセキュリティリスクは?
A: 一般に、BLEのリレー攻撃や電波干渉、電池切れによる停止、各錠のファームウェア更新漏れが挙げられます。対策状況は製品ごとに異なるため個別の確認が必要です。
配線式では、判断の中心が制御器に集まります。リーダーは「読み取った番号を送る」役割に徹し、許可・不許可の判断や履歴の記録は制御器が担う構成が一般的です。管理すべき「頭脳」が少数にまとまるので、設定変更や確認のポイントを絞り込めます。
たとえば月曜の朝、ある扉だけ電池切れで開かず、社員が廊下に並んでしまう――。こうした場面を配線式なら構造的に避けられる、というのも見逃せない利点です。
意外に思われるかもしれませんが、無線か配線かの選択は「どちらが新しいか」ではなく「どの扉に、どのリスクを許容するか」の問題です。会議室は無線、サーバー室と通用口は配線式、といった使い分けも十分に合理的と言えます。
配線式でも油断できない、Wiegand配線と制御器の守り方
「有線なら安全」と言い切れないのが、この分野の難しいところです。むしろ配線式の弱点を理解しておくほうが、社内への説明にも説得力が出ます。
代表的な注意点が、リーダーと制御器のあいだで使われるWiegand(ウィーガンド)という通信方式です。Wiegandは入退室管理で広く使われる、カード番号などをシンプルな信号で送る規格で、一般に通信の暗号化を前提としていません。つまり、リーダー裏の配線に盗聴用の機器を割り込ませられると、信号を読み取られる余地があるということです。
Q: Wiegand配線のセキュリティ上の弱点と対策は?
A: 一般にWiegandは暗号化を前提としない方式のため、配線への機器の割り込みが弱点です。制御器を扉の内側の管理区画に置き、ケーブルを壁内や配管で保護するのが基本の対策です。
対策の基本は、物理的に触らせないことに尽きます。具体的には次のような設計が考えられます。
- 制御器は扉の内側、できれば施錠された管理区画(EPS・サーバー室内など)に設置する
- 扉の外側に露出するのはリーダー本体だけにし、配線は壁内や金属配管に通す
- 扉のこじ開けや開けっ放しを警報で検知できるようにし、異常に気づける仕組みを用意する
現場でよくある例として、改装工事のあとに天井内のケーブルが露出したまま放置されているケースがあります。配線式の利点は「経路を囲い込める」ことにあるため、工事後の配線確認まで含めて運用に組み込んでおくと安心です。
停電時の振る舞いも、設計段階で決めておきたいところです。一般に電磁錠は通電中に扉を吸着して施錠するため、停電すると解錠側に倒れます。避難経路の確保と防犯のどちらを優先するか、非常用電源をどこまで用意するかは、建物の条件や関係法令によって変わるため、施工業者や所轄の消防などと相談して決めてください。
クラウドと接続する場合はどうでしょうか? ネットワークにつなぐ機器は、有線であっても情報システムの資産として扱う必要があります。接続するネットワークの分離、管理用アカウントや API の権限の絞り込み、操作ログの確認方法までを、ほかのシステムと同じ基準で決めておくのが現実的です。
Lavishで組む配線式の入退室管理とクラウド連携
ここまでの考え方を、弊社の電気錠ブランド Lavish でどう形にできるかをご紹介します。前提として、Lavish は Bluetooth に対応しておらず、電気配線で機器をつなぐ配線式の製品群です。無線の入口を持たない構成を選びたい方には、そのまま当てはまる設計と言えます。
構成の中心になるのが、ネットワーク制御器 COA-23F/COA-45F です。登録できる利用者は20,000人で、Wiegand は26~66bitに対応しています。インターロック(前の扉を閉めないと次の扉が開かない仕組み)やアンチパスバック(入室記録のない人の退室を制限する仕組み)、二重認証、複数人認証、曜日・休日スケジュールなど、重要エリアで求められる制御を制御器側で設定できます。詳しくはネットワーク対応制御器のページをご覧ください。
Q: Lavishの配線式入退室管理をクラウドで管理するには?
A: ネットワーク制御器 COA-23F/COA-45F にクラウドゲートウェイ GW-2(有線LAN)を追加すると、クラウドサービス WatchKey で遠隔解錠や履歴確認、利用者の登録・削除ができます。
クラウドで管理したい場合は、COA-23F/45F にクラウドゲートウェイ GW-2 を追加します。GW-2 は有線LANで接続するため、ここでも無線は使いません。WatchKey からは遠隔解錠・施錠、入退室履歴の確認、カードやQRコードの利用者の登録・削除が可能です。メールや Webhook による通知に加え、API トークンの権限を操作ごと・扉ごとに絞れるので、連携先システムに必要以上の権限を渡さずに済みます。WatchKey の利用料は月額0円で、API の利用料・連携料も無料です(機器代・施工費・回線費は別途かかります)。仕組みはクラウドゲートウェイ GW-2 のページで確認できます。
なお、GW-2 を使わない構成ではローカルPCでの管理となり、Windows 向けの管理ソフト Lavish Smart Access を無料でお使いいただけます。
回線が切れたときの心配も、よくご相談いただく点です。COA-23F/45F に登録済みのカードやQRコードであれば、回線が途切れても入退室は続けられます。クラウドの便利さを取り入れつつ、扉の開閉そのものはローカルの制御器で完結させる、という分担です。

屋外や通用口では、屋外用リーダー RESCR-SHF3ME が候補になります。防水 IP66 準拠で、指紋・カード・暗証番号に対応し、スタンドアローン/Wiegand出力/制御器の3モードで使える機種です。電磁錠はコイルに銅を採用しており、長く使い続けることを前提にした作りとしています。全製品2年保証で、故障したときは弊社が修理・交換を行います。
取り付けには扉への施工や機器同士の配線・接続に専門の知識が必要なため、ご自身での工事は難しいとお考えください。弊社へ直接ご相談いただければ、現地調査・お見積りから施工まで承ります。お付き合いのある施工店経由でのご導入も可能です。
サーバー室やデータセンターのように、扉の外に何を露出させるかを厳しく問われる場所こそ、配線式の設計が力を発揮します。用途別の構成例はサーバー室・データセンター向けのページにまとめています。重要エリアの扉の数や、既存の電気錠・配線の状況をお知らせいただければ、構成の考え方からご提案しますので、まずはお問い合わせからご相談ください。


